おはようございます。ナックルです。
今週の日本におけるArbitrum関連のビッグニュースは、何と言っても「Fracton Ventures、Arbitrum Foundationとの提携によりArbitrum Japanの立ち上げ」ですね!
The Blockがそのことを記事にしており、海外からも注目されたニュースであったことが伺えます。
Arbitrumを応援する一個人である私としては、Arbitrum Japanの発足はとても嬉しいことです。
以前のエントリーで、「なぜこのニュースレターをArbitrum DeFiに特化したものへリニューアルしたのか」の理由を書かせてもらいましたが、
ArbitrumはDeFiのメッカである
DeFiは金融の革命であり、今後も発展していく
Arbitrumが一度手に入れたネットワーク効果による優位性は、簡単には揺らがない
という考えは、今も変わっていません。
※ネットワーク効果:ユーザーが増えることによってそれ自体の価値が高まる効果のこと。それにより、更なるユーザーを引き込む。
そんな中で、Arbitrum Foundationが日本市場に注目してくれていること、そして、実績のあるFracton VenturesがArbitrum Japanを立ち上げ、事業開発や教育・啓蒙活動を行い、日本コミュニティを盛り上げてくれることをとても嬉しく思います。
私のDeFiの知識や経験でお役に立てる部分があれば、ぜひ活用してほしいなと思います。
さて、社会的な強さを持ったFracton VenturesがArbitrum Japanとして活動を始めてくれるので、私のメディア活動ももう少し力を入れていきたいと思います。
「Arbitrumの情報をわかりやすくて効率的に収集できる公共財としてのメディア」でありたいと思っています。(今のところ「財」と呼べるような代物ではありませんが…w)
なのでこれからは、今までよりもう少しだけ「より真面目度の高い情報」を「専門用語を多様せずに」配信していきたいと思います。
これまでは、情報が届くべきではない人に情報が届かないように、あえて専門用語を多様し、情報のハードルを上げるよう努めてきました。なぜなら、「DeFiという領域は金銭が絡む領域で、ハッキング被害や詐欺被害が後を絶えない現状、自分のお金を自分で守ることができない場合は、その情報が届かない方が良い」とまで思っているからです。
投資は確かに自己責任ではあるのですが、発信者が損失を生じさせるような情報を不用意に発信してしまうことは良くないと考えています。投資助言を行ったりしていない限りは発信者に責任はありませんが、それでも損失を被ってしまった人はその原因に対し恨めしく思うものです。
ですが私にも、「Arbitrumを知ってほしい」「DeFiリテラシーの高いユーザーが増えてほしい」「好きなArbitrum DeFiの話を一緒にしたい」という思いはあります。Arbitrum Japanが立ち上がった今、私のメディア活動も、もう少しだけ力を注いでいこうかなと思います。
前書きが本編かのように長くなってしましましたが、ここから本編のスタートですw
🦙 Arbitrum TVL Change (7 Days)
・Vaultka:永久先物DEXのLPに特化したレバレッジファーミングプロトコル。現在、トークンリリース前のキャンペーン実施中。
・Ramses:ve(3,3) DEX。Arbitrum助成金の恩恵を受けるだろうという思惑で、注目度↑
ArbitrumDAOの約$50Mの助成金プログラムに105件の申請。注目度の高い10のプロジェクトを解説
Arbitrum DAOの約$50Mの助成金プログラムへの申請期間が終了した。このプログラムに105件の申請が集まった。その中から、注目度の高いプロジェクトをピックアップしていく。
助成金プログラムの流れ
その前に、このプログラムの流れについて解説する。
9月20日:申請期間の開始
9月27日:申請期間の終了
9月28日:レビュー期間
10月5日:投票期間の開始
10月12日:投票期間の終了
申請が賛成された場合は、所定の手続きを経た後に、助成金を受け取ることができる。
申請が棄却された場合は、サイクル2へ移行し、上記と似たような流れを経て、賛成を得られるように提案をブラッシュアップしていく。
そしてこのサイクルが、50M$ARBの予算を目途に、繰り返されていく。
申請したプロジェクト一覧
助成金プログラムに申請した105のプロジェクトおよびその申請額が、このスプレッドシートにまとまっている。
注目度の高い10のプロジェクト
105のプロジェクト全てを解説することは難しいし、誰も読まないと思うので、注目度の高い10のプロジェクトとその助成金の使い道について、簡単に解説する。
注目度の高さの理由は、以下の2つを理由とした。
申請した助成金額が大きい(申請が通った場合の全体に与える影響度が大きい)
フォーラムの申請ページの閲覧数(良し悪しは置いておいて、市場からの関心が高い)
申請した助成金額の大きい(3M以上)プロジェクトは以下の9つ。
GMX:14M
MUX:9M
Gains:7M
Lido:5M
Aave:4M
Radiant:3M
Camelot:3M
Jones:3M
Vertex:3M
申請ページの閲覧数が多い(1.5k以上)プロジェクトは以下の6つ。その中から、特に閲覧数の多いRAMSESのみピックアップする。
RAMSES:3.3k
GMX:2.8k
Dopex:1.7k
Balancer:1.6k
Radiant:1.5k
Trader Joe:1.5k
よって、上記の10のプロジェクトとその申請内容について、簡単に解説していく。
なお、私が主観的に「いい申請内容だな〜」と思ったものについてはスレッドでまとめたので、興味があればどうぞ。
1. GMX
Arbitrumを代表とする永久先物DEX。
ArbitrumのDeFiを牽引してきた存在であり、2022年9月から2023年4月辺りまでは、1日当たりの取引高はざっくり$200M〜$300Mくらいあり、永久先物DEXとしてはdYdXに次ぐ圧倒的2位の座を誇っていた。
しかしここ最近はその存在感を弱めてきている。
上記のグラフにはGMXv2の数値が含まれていないのだけれど、v1とv2を合わせたグラフを見てみても、1日当たりの取引高はざっくり$30M〜$50Mくらいと、存在感を弱めてしまっている。
その理由のひとつには「暗号資産市場全体が歴史的な低ボラティリティである」ということがあるのだけれど、それ以外にも「競合の永久先物DEXの存在感が増してきている」という理由も考えられる。
それは、競争原理に則った自然な変化であるし、Arbitrumエコシステム全体がGMXへの依存状態から脱却して多様化するためにも大切なことである。
けれどやっぱり、Arbitrumの顔であるGMXの元気がなかったら、全体の士気が下がってしまうw
GMXが盛り上がることがArbitrum全体にとってのメリットとなることは、おそらくみな理解しているはずである。
助成金は可決されると予想している。
助成金の使い道
トレードインセンティブ:6M
GMXv2の取引手数料は、状況によって多少変動するのだけれど、だいたい0.06%である。助成金を使って取引手数料の一部をユーザーに還元することによって、実質の取引手数料は0.02%にまで引き下げられる見込みとなっている。これはBinanceと同等の取引手数料の低さである。
流動性提供インセンティブ:6M
GMXv2の流動性は、トレーダーの需要に応えきれないほど不足してしまっている。流動性を引き付け、トレード環境を成り立たせるためには、初期のインセンティブがどうしても必要になってくる。
そこへインセンティブを向けることによって、「流動性が集まる→取引高が上がる→流動性提供の利回りが向上する→…」の良いループの形成が期待できる。
GMXと統合されたプロトコルの構築支援:2M
GMX最大の長所であるDeFiレゴの構築支援に使う。GMXの優位性を増加させつつ、外部のプロトコルにとってのメリットともなり、良い使い道だと思う。
2. MUX
複数のチェーンで展開している永久先物DEXのアグリゲーター。MUX独自でプールを持つほか、GMXとGainsがアグリゲーターに統合されている。
※アグリゲーター:価格.comみたいなもの。統合された複数のDEXの中から、ベストな価格を示してくれる。
助成金の使い道
トレードインセンティブ:5M
取引手数料がだいたい0%となるように、支払われた手数料が還元される。
流動性提供インセンティブ:4M
MUXが独自で持っているプールにインセンティブが配られる。
3. Gains
本拠地PolygonからArbitrumに展開し、Binanceへの上場まで果たすという、大出世した永久先物DEX。
$DAI (米ドルステーブルコイン) のプールがトレーダーの取引相手として利益も損失も全てを請け負う。この仕組みにより色々なAssetsを扱うことができ、複数の暗号資産だけでなく、為替もコモディティもトレードすることができる。
助成金の使い道
トレードインセンティブ:6M
取引手数料の還元ではなく、より良い行動に対して報酬を配るポイントシステムを導入する。例えば、「毎日取引を行う」「利益が多い」「取引高が多い」「色々なAssetsを取引している」などである。
「より良い行動」と定義された取引を行っているようなユーザーを惹きつけリピーターになってもらうことができれば、それはGainsの有機的な成長につながる。
流動性提供インセンティブ:1M
$DAIのプール ($gDAI) へのインセンティブのみでなく、$gDAIを統合している他のプロトコルへのインセンティブとしても使用する。そのプロトコルとは、Pendle、Radiant、Siloなどである。
4. Lido
Ethereum最大のリキッドステーキングプロトコル。
※リキッドステーキング:ステーキングされた$ETHをトークン化することで、利回りを得ながらDeFiで使うことができる。
助成金の使い道
流動性提供インセンティブ:5M
Arbitrumに流通しているLidoのリキッドステーキングETHである $wstETH の流動性インセンティブとして使用する。
5. Aave
DeFi最大のレンディングプロトコル。
助成金の使い道
Aaveのステーブルコイン $GHO の流動性インセンティブ:2.5M
Arbitrumネイティブに $GHO の発行を可能にし、深い流動性を獲得することで $GHO の発行を促進する。
ガス代の補助:150k
Account Abstraction Walletと協力し、$GHO を転送・送金が無料のステーブルコインとする。
その他
6. Radiant
Arbitrumで生まれ、BSCとEthereum(もうすぐ)に展開するレンディングプロトコル。Binanceが出資したことでも有名である。
助成金の使い道
LPトークンのロックに対するエアドロップ:約2M
Radiant利用によるインセンティブを受けるためには、 $RDNT のLPをロックする必要があるのだが、そのロックに対して報酬を配る。
GM (GMXv2のLP) トークンの採用の促進:約500k
GMトークンをRadiantの担保として採用し、利用者には特定の条件に基づいてエアドロップとして報酬を配る。
流動性提供インセンティブ①:約200k
Camelot v3の RDNT-ETH LPと、さらにそのLPを利用したDopex v2に対し、インセンティブを配る。
流動性提供インセンティブ②:約60k
Plutusの $plsRDNT (ロックされた $RDNT LPの流動化バージョン) へのインセンティブとして配り、需要を促進する。
7. Camelot
Arbitrum最大のネイティブDEX。
Arbitrumのネイティブプロトコルの流動性の本拠地で、DEXのTVLで比較するとUniswapに次ぐ第2位の座を維持している。
助成金の使い道
パートナープロトコルの流動性インセンティブ:約2.7M
66のパートナープロコトルのトークンの流動性提供に対し、インセンティブを配る。これにより多くのArbitrum内プロトコルのトークンの流動性が深まり、トレードのしやすい環境が構築される。
新規プロジェクトの誘致:約300k
これまで行ってきたように、他チェーンにあるプロジェクトのArbitrum展開の支援や、新規プロジェクトの支援に使われる。
8. Jones
様々な戦略で利回りを生む製品を作っているプロトコル。
主な製品は以下の3つである。
jGLP:レバレッジ2倍の$GLP (のようなもの)
jUSDC:利付きステーブルコイン
jAURA:$AURA の自動複利保管庫
jGLPとjUSDCに関しては過去に解説スレッドを書いているので、興味があればどうぞ。
助成金の使い道
現在ある製品のユーザーへのインセンティブ:2.3M
上記3製品のユーザーへのインセンティブとして使用する。
$jUSDC のレンディングプロトコルへインセンティブ:200k
利付きステーブルコイン $jUSDC を採用するレンディングプロトコルへインセンティブを向けることにより、そのユーティリティを拡大することができる。
将来の製品のユーザーへのインセンティブ:500k
9. Vertex
オーダーブック式の高機能永久先物DEX。
取引高の成長度合いが素晴らしく、GMXを圧倒的2位の座から引きずり下ろした競合の一角である。
9月の一ヶ月間の取引高は、以下に示す通り4つのDEXが横並び状態である(この4つの中でGMXだけがトレードインセンティブがない)。
dYdX:17.4bn
GMX:2.0bn
Synthetix:2.0bn
ApeX:2.0bn
Vertex:1.9bn
助成金の使い道
トレードインセンティブ:約2.5M
取引手数料の最大75%が、支払ったユーザーに還元される。
マーケットメイク用の流動性へのインセンティブ:450k
ElixirのFusion Poolというマーケットメイク用のステーブルコインのプールに対しインセンティブを配る。この機能はもう間もなく実装されるらしい。
10. RAMSES
ve(3,3) DEX。助成金の恩恵を受けるだろうという思惑や、直近のファンダメンタルズの改善により注目度が向上したDEX。
※ve(3,3):Yearn Financeの創業者かつFantomチェーンのエンジニアであるAndre Cronjeが開発したSolidlyというDEX特有のTokenomics。それは、Curveの欠点とUniswap v2の欠点をカバーし、Olympusが提唱した(3,3)のゲーム理論を組み合わせたもの。このSolidlyのフォークは各チェーンに散らばり、最も成功したDEXがOptimismのVelodromeである。
RAMSESだけではないが、ve(3,3) DEXも改良が進んでおり、RAMSESは資本効率の高い集中流動性と、流動性提供に対する報酬の工夫(xoRAM) が実装されている。
助成金の使い道
パートナープロトコルの流動性インセンティブ:1.2M
ve(3,3) DEXはFantom勢力との提携が厚く、Camelotとはまた異なるタイプのプロトコルとの提携を持っている。
どのプロジェクトに助成金が配られるのか、要注目ですね!
書き終わらないかと思いましたが、なんとか10プロジェクトをまとめられましたw
それではまた来週!
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